Amazonプライムビデオでオッペンハイマーの日本語吹き替え版が売ってたので買うことにした。映画館で3回観たけど日本語で見るとまた新鮮な感じがする。口の動きと合わせるためなのか字幕版とセリフが結構違う。
特に良かったのはオッペンハイマーが息子のピーターをハーコン・シュヴァリエに預けるシーンのセリフ。吹き替え版でここが一番感動した。
こんなやり取り(映画本編の字幕を一部編集して引用)
オッペンハイマー「ピーターを預かってくれハーコン。しばらくの間」
ハーコン「キティも承知か?」
オッペンハイマー「もちろんだ。承知だとも」
オッペンハイマー「僕らは自分勝手で最低だ・・・忘れろ」
ハーコン「自分を最低だと分かる者は最低じゃない。まあ座れ」
ハーコン「お前はこの世界の向こう側を見通せる、でも支払うべき代償がある。力を貸そう」
この最後の部分。「お前はこの世界の向こう側を見通せる、でも支払うべき代償がある。」字幕版で観た時はこの人分かっててかっこいいな~って思っただけだった。確かにオッペンハイマーは世界の裏側にある隠された構造を知っている。彼は物理学者だ。後ろの「でも支払うべき代償がある。」というのは物理学の功罪というか、原爆開発の代償を予感させるようなセリフなのかな~と字幕版ではテキトウに流していた。英語のセリフは"There is a price to be paid for that."なので正確に訳した感じになっている。
でも吹き替え版で全然違う印象を受けた。吹き替え版のセリフはこうだ。
「ロバート、君はこの世界の向こう側にあるものを見てる。何かが犠牲になるのは仕方ない。力になるよ。」
こっちのほうが具体的になった。特に後半部分。「何かが犠牲になるのは仕方ない。」っていうのは代償というよりは単純にオッペンハイマーが凡人にはできないような特別なことができるからこそ、普通の人ができるようなことが出来ないという問題を言ってるのかって分かった。いや今思えば字幕版でもそういうことを言ってるんだろうけど、僕が変に深読みしてしまったせいで本来の意味を見失っていた。
そして原爆開発の代償を予感させるセリフはむしろ前半に変わっている。「向こう側を見通せる」というと単純に天才科学者なんだな~っていう感想を抱く。一方、「向こう側にあるものを見てる」だとちょっと詩的な表現になってる。
向こう側にあるものというのは単に隠された世界の構造ということだけじゃなくて、なんかこの世界の行く末とかそういう意味を持っているようにすら感じられる。
英語ネイティブじゃないので、もともとのニュアンスがどういうものなのか全くわからないけど、少なくとも日本語吹き替えはかなりエモい感じ変わった。ハーコン良いこと言うじゃん!ってつい感動しちゃった。
僕も今度から普通のことが出来ない人に出会ったときはこのセリフを言っていきたい。「君は〇〇ができる。何かが犠牲になるのは仕方ない。」ハーコン構文の誕生である。でもこれいきなり言われるとちょっと怖いので、親しい友達だけに使っていこうな。
もちろん、英語特有のキレというか、リズムのかっこよさみたいなのが削られてしまってる部分もあるので、そこはしゃーないなって感じではある。冒頭のニールス・ボーアがオッペンハイマーに言う"Algebra is like sheet of music. The important thing isn't can you read music, its can you hear it. Can you hear the music, Robert?"というリズミカルなセリフが微妙な感じになってしまったのは残念ではある。
まあ、日本語版は英語版には無いエモさがある。だから、何かが犠牲になるのは仕方ない。
そんなわけで、できれば日本語も英語も両方みて堪能してほしい。そんではまた!