各々の専門性を活かして役割を分担し、プロジェクトを分業化するのはいいことだと誰もが疑いもなく信じている。経営者は経営のことだけを考えていて、プログラマーはプログラムのことだけを考えていて、企画は企画のことだけを考えている。じゃあ一体誰が全体像を把握してるんだろうか?そう、誰もしていないのである。
その結果として、「存在すべきでないものを最適化する」という現象が発生する。
これは一種の、ブルシット・ジョブとも呼べるだろう。よくよく考えると本当は不要なはずなんだけど、誰も全体像を把握してないので、それに気づかない。だからみんな自分の仕事が無意味だということに気づかず、それを最適化しようとする。
車についてるエアコンの効きを調整するディスプレイ。運転中でもボタンのUIを瞬時に判別できるように配色や形状を工夫しようという企画。企画に頼まれて色々な案を提示するグラフィックデザイナー。タッチしたことを分かりやすくするために振動するようにしたらいいんじゃないかと機能を提案するエンジニア。現場をあれこれマイクロマネジメントするのは良くないと考えて自分の仕事に集中する経営者。誰も、「そもそもそれディスプレイにする必要無くない?物理ボタンで良くない?」って言う人がいない。
そんな感じで良くわからない仕様のまま実装され、5年後とかにチーム全員が入れ替わったくらいのタイミングで誰かが「これ必要なんですか?」って言い出して、みんな必要性を説明出来ないから無くされる。
もうやめようよ・・・
そう思うが、全体像を把握している人は本当に少ない。
人は専門性を称賛し、そうでない人を「広く浅く」と言って馬鹿にする。もちろん実際、沢山のトピックをただ覚えているだけの、広く浅い人、つまり「物知り」が沢山いるのも事実だ。本当に必要なのは覚えることではなく、物事と物事の関係性を思慮深く考え、真の構造を明らかにすることだ。でもそれができる人は少ない。僕はできるようになりたいと思っているけど、今のところ出来ていない。これはきっと果てしない道のりであり、人々から注目を浴びることのない取り組みであるが、この世界には必要なことだと思う。
存在すべきでないものを最適化しないために。意味のない事に人生を費やさないために。